「国際情勢の流動化と中国」
今秋の中国共産党第20回党大会で習近平は総書記として3期目に入るのか、あるいは党主席の職位が復活するのか、どのような形で権力を維持するのか注目される。中国はコロナ対策やロシアのウクライナ侵攻の影響を受け経済の減速圧力が高まる。ゼロ・コロナを建前として維持しながらいかに経済を実質的に立て直すか、経済政策の舵を取る李克強首相の手腕が問われてもいる。
経済発展を果たして大国となった中国は、「社会主義現代化強国」に移行するという中長期的目標を掲げている。習近平政権下で法整備や政府・軍の機構改革に基づく統治の制度化および新しいインフラ構築が進んだことで、習近平政権の統治スタイルは長期的に維持される見込みだ。
習近平政権下の「新時代」の10年を経て、経済力をテコに、これまで西側先進諸国が占有していた「国際話語権(国際的なディスコースパワー)」の向上と拡大を図る中国。新興国、発展途上国の代表として国際世論の誘導を強めたい考えだ。そのため中国は、ロシアのウクライナ侵攻を支持せざるを得ないものの、本音では国際世論を気にしないロシアの行動を苦々しく思っているだろう。
中国は自国の「中国式民主」こそが効率的な民主主義の在り方と主張するなど、価値観や政治体制をめぐって米中の対立は複雑化する一方だ。両国間の摩擦の元である台湾問題も、過去最大規模の中国軍機が台湾上空を飛来するなど過熱。バイデン大統領は米中の対立が先鋭化するなかで来日し、日米共同記者会見で台湾問題に関しては強い姿勢で臨むことを確認した。
一方、習近平政権は新たにグローバル発展イニシアティブ(GDI)、グローバル安全保障イニシアティブ(GSI)を掲げ、中国主導の国際秩序を形成していくというヴィジョンを打ち出した。GDIの構想では、新興国の「発展(Development)」をSDGsに絡め、国連の概念に基づいて自らの議論を構築する巧妙なアプローチを採っている。GSIは中国が安全保障領域でもこれまで以上に積極的に国際ルール作りに乗り出すことを示唆する。
国際情勢が流動性を増すなか、わが国は中国との競争関係を前提としながらも信頼醸成のための対話の窓口を開き、両国関係の安定化に努めるべきだ。
江藤氏は、そのほか中国の歴史認識や外交攻勢などについて詳細に解説。その後の質疑応答でも活発なやり取りが行われた。